803 近代家族の成立と終焉 上野千鶴子

c0195327_1985564.jpg住まいの計画には、住み手の家族に対する考え方を理解することが必要で設計に影響する。
現在の家族には、さまざまなタイプの家族形態が存在し、その意識の変化を実感する。
また、戦後日本社会の変化の多くは「家族」をめぐっておき、「家族問題」による原因と思われるの事件に衝撃を受ける。
「イエ」、「家族」とは。「家制度」、「家族」はどうなっていくのか。いずれ解体するのか。
そもそも「イエ」「家制度」「家族」とは。
10年ほど前に手にした本です。東大教授、上野千鶴子の1990年頃の著書。
上野千鶴子は、関西のタレント遥洋子が男にケンカで勝つ方法を師事した学者。



Ⅰ 近代家族のゆらぎ
イエとは、家業の共同、家名の共同、家屋の共同、家産の共同、家計の共同。
家族とは、文化人類学によるミニマムの定義は「火(台所)の共同=居住の共同」、すなわち共食共同体。出自の原理は「血縁の共同」である。

「家族」を構成するレベルには、現実と意識があり、その二面から現代家族の実態を分析。
ファミリィ・アイデンティティ(「境界の定義」=家族を成立させている意識で意識と現実のズレ。成員相互のズレを認識)概念による意識、伝統型と非伝統型のダイアグラムを使い、現代の様々な家族形態を実例インタビュー(家庭内離婚、非入籍カップル、模擬家族、同好会カップル等)する。

日本の「家族」は、意識は伝統型だが形態は非伝統的、形態は伝統型だが意識は非伝統的な二つの方向へ進みつつある。P9図4

家族は危機に対して結束するよりも、問題を抱えたメンバーを分離する傾向がある。いわば「姥捨て・子捨て・夫捨て家族」である。P10

同居、別居を問わず、法律婚を否定する事実婚カップルの方が「ほんものの家族」を主張する。P24

家産、家業、家名の様な実体的基盤を失う事で“「同火」=居住の共同”“食の共同”は揺らぎ、更に「性の共同」「血縁の共同」も怪しくなっている現代、ファミリィ・アイデンティティはその根拠を求めて彷徨っている。-中略-家族が、自由度(不安定度)を高めている時代に、子供達は実の家族よりももっと絶対的な関係(※「家族幻想」「宿命意識」にすら頼る)を求めているように見える。

Ⅱ 近代と女性
近代家族とは、産業革命以後に出現した家族のことで、産業化の進化で経営体としての「家」は衰退した。夫は外で働き、妻は家事をするという役割の分業、「家」の機能は、子育てなどに限定された。
また、家族は地域共同体や家系のしがらみから独立、意志決定の自律性を獲得する。
このほか、子ども中心主義や母性の観念の成立など情緒的な関係を強化する特徴、社交の衰退、核家族といわれる。

「家」制度はひさしく「封建遺制」と考えられてきましたが、近年の家族史研究の知見は、「家」が明治民法制定による明治政府の発明品であることをあきらかにした。P69
「家」は武家の文化伝統であって、庶民は自律的な共同体社会の中で暮らしていた。共同体はタテ型の「家」秩序よりヨコ型の年齢階梯秩序、結婚等に自由度があった。

佐藤忠雄の『ホームドラマ論-家族の甦りのために』から、西洋と日本の家長について比較を引用。
家族の一員が犯罪を冒して逃げ込んできた時、フランスやイタリアの家長は、警察に引き渡すことを拒み、むしろ自分の手で私的な制裁を加えようとする。それに対して、日本の家長は、犯人を庇うどころか官憲に引渡し、あまつさえ累が及ぶのをおそれて、勘当して縁を切ることすらする。P73
Ⅳ 高度成長と家族
江藤淳の『成熟と喪失』「“母の崩壊”」から母の表象を論じ、母性原理を「農耕社会的な」と表現、その農耕社会も不可避に近代の洗礼を浴びると。

「支配する母」の背後には「恥ずかしい父」がおり、それゆえにこそ、その「恥ずかしい父」がおり、それゆえにこそ、その「恥ずかしい父」を夫にするほかなかった母とのあいだには、息子との黙契がなりたつ。だが息子は母と平和な同盟が保てるわけではない。息子にとって父は母に恥じられる「みじめな父」となり、母その父に仕えるほか生きる道のないことで「いらだつ母」になる。だが、息子はいずれ父になる運命を先取りして父を嫌悪しきれず、「みじめな父」に同一化することで「ふがいない息子」と化す。-中略-娘は自分を待ち受けている人生が、しょせん思うようにならない男にあなたまかせの舵を預けて、「いらだつ母」のようになるのだと観念するために、「不機嫌な娘」になる。P199

※剛速球のストレートで胸に突き刺さることが多い論文です。
著書から20年経ち、家族はさらに変化したと感じます。より最近の家族について何か書者を探す必要を感じています。

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by MILLION-lion | 2009-02-23 19:10 | 8 芸・美・文化・歳時記


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