592 北村美術館 四君子苑 吉田五十八編

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北村美術館は京都の出町柳の近くにあり、戦前の吉野の山林王だった北村謹次郎氏は数寄者として知られコレクションを公開しているギャラリーで、主に茶道具が中心の展示。

その横の北村邸【四君子苑】が、春と秋に数日だけ公開される。額に従えば、四君子園。
公開日の案内はなく、事前に電話で問い合わせた。今年の秋は、10月20日の予定で、毎年すこし時期を変えているようです。

数寄屋造りの料亭は、高額な食事をすれば利用できるが、自由に見学できず、気ままに自由な見学をゆるさせる数奇屋造りでは最高峰。京数奇屋名邸十撰で、勿論、文化庁登録有形文化財。


施主の構想により美材・良材の得やすかった戦時下の昭和15年~19年に京の名工、北村捨次郎(施主とは親戚関係ではない)による茶の湯の施設として、伝統工法による数寄屋(門、玄関寄付、立札席、渡り廊下、小間茶席「珍散蓮」、広間「看大」)及び数奇屋造りの住居棟(遺作)が完成された。

しかし、敗戦後10年間、進駐軍に接収された住居棟は施主が一度も住まう事なく無残に改造され、昭和39年に住居棟(RC造)を近代数寄屋建築家の第一人者、吉田五十八の設計で建替、共存して一つの建物群となっている。庭も施主の構想に基づき石の収集を含め佐野越守による。


10時に一番乗りしました。もしかすると本来は11時かもしれませんが急いで準備され、入れてくれました。
そのために私達だけ、まずは、吉田五十八の設計の住宅棟から。
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内玄関は西向きで特に深い軒下の構え、午前中は逆光も重なり撮影には露出が難しい。
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玄関の内部に入ると驚くほど暗く感じ、太く大きな面取柱、梁と天井の仕上げから民家を思わせる。
ここも露出が難しく、手ブレと画質が気になる。
柱などは、空調に配慮して無垢材ではなく栗の張物。
天井は東南アジアから輸入した太い籐のナグリ仕上げで角に、床はカーペット。
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居間の天井の高さがすばらしい。
全体的には、軽やかで繊細なデザインはモダンな簡潔さが感じられる。
写真ではコントラストが強く感じますが、ここも逆光なので実際の印象は、写真で感じほどではありません。

工業化された新しい建築材料を積極的に用いることで、数奇屋建築に通ずる細い線の構成による繊細さを表現している。
アルミサッシの使用によるコーナーレスの納まりは、当時の最先端のディテールで感動した。

広間とは、段差を設け、居間との目線の調整を図っている。
しかし、内法を低くおさえ、開放しながらの結界を示しているように思える。
居間と広間は、共に埋め込み照明でスッキリ仕上げている。
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広間の和室は続き間とし、周囲に広縁を設ける。
形式化された伝統的な和風表現を自由に再構成されている。

内玄関は驚くほど暗かったが、居間と広間はとても明るく、陰翳は消されている。
吉田五十八は、元来、天井面を軽く見せ、明るい和風建築、和風の近代化を試みていた。

動線は実によく計画され、機能性もしっかり対処している。

奥の変形6畳には床の間と仏間、手前の8畳とは、引込み建具が柱で隠されている。
仏間の配置・意匠は、今でも新鮮。庭の阿弥陀がいつも見守っているそうです。
庭、茶席との視線などは様々な発見に時間を忘れてします。
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和室の建具は、吊建具により敷居にV溝、鴨居を追放し溝で処理、天井の目地と一体のデザインになるように収めている。このデザイン手法は、1957年の赤坂のS邸で実践されている。

今日はここまで、明日に続き。


写真は550枚撮るが、まだ不足。ランチを予約していたので12時過ぎに出たが、そうでなければ1日居たと思う。

親切な参考デ-タ
秋の菊(きく)、夏の竹(たけ)、冬の梅(むめ)、春の蘭(らん)から「四君子(きたむら)」
「菊」精気を益し万物を生成する根元。
「竹」不屈の忍耐力。
「梅」厳寒に強く春一番に咲く花。
「蘭」善人。王者、人格者の香り、風格。

中村昌生(京都工芸繊維大名誉教授)選出による京数奇屋名邸十撰
霞中庵(竹内栖鳳美術館)
封龍山荘
清流亭(南禅寺)
野村碧雲荘(南禅寺)
四君子苑(北村美術館)
旧広瀬別邸
虎山荘(陽明文庫)
山科山荘(北村伝兵衛邸)
有心堂(嵯峨野)
土橋邸(鷹峯)

吉田五十八[1894年(M27)~1974年(S49)]は、東京芸大教授で芸術院会員、文化勲章受章者。
日本橋で太田胃酸の創業者の家に生まれる。母方の実家を継ぎ吉田姓になる。
東京芸大は8年で卒業、岡田信一郎に学ぶ。
西洋の伝統的な建築に強い影響を受け、日本の伝統のなかにある数奇屋をモダニズム的な解釈を新たな創造の源とした。
新興数寄屋の先駆者で、作品には吉田茂邸(先日の火災で焼失)、吉屋信子邸、岸信介邸、料亭の新喜楽、つる家、歌舞伎座(建替え計画予定)、大阪のリーガロイヤルホテルなど、趣味人で長唄やお茶の関係でも交友が広かった。


村野藤吾は、吉田五十八の一周忌に当って建築雑誌のエッセイで、東京の職人による仕事の出来映えの正確さ感嘆したことを述べている。

これは吉田流がよく浸透したことを示していると考えるが、同時にこれらの仕事の欠点として「機械仕事のように正確で、その労力や細工のうまさが、素人にも、誰にでも理解できるからであろうが、同時に、時間と労力をかければ、どの職人でもやれる可能性がある」と指摘し、また、「何となく、味気のない、遊びも自然味もない」と述べる。

吉田流は「何人にも理解され万人を納得し得る丈の良さ、その良さの中に普遍的な要素が含まれている」という点では近代的な考え方に支えられているともいえる。
しかし、純粋数奇屋のなかに「否普遍性、没社会性」といった性格があり、それが数奇屋の遊びの部分、価値の転倒や反転といった方法が展開する部分なのではないかと問う。

吉田の作品は、多くの亜流を生みだすほどの普遍性をもちながらも、独自で特異な作風を保っていたこと、このことこそ考えなければならないのではないか、とも付け加えている。

そして、その普遍性は吉田流の90%であって、残りの10%には誰にも侵すことのできない聖域としての吉田固有の作風がある。
村野はこれを吉田が少年時代をすごした東京の下町の近世的な情緒に求めて、ここに吉田流の可能性をみようとした。


今日の草花は、山吹。一重と八重。
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by million-lion | 2009-04-28 20:08 | 5 古典建築・現代建築


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